5-doxyl stearic acidでラベルした角層に対して電子磁気共鳴法を用いて測定したスペクトルから算出したorder parameter Sは、ヒト角層の流動性を評価するのに有用な手法でありorder parameter Sの値はヒトパッチテストにおける皮疹判定スコア、TEWL値、細胞毒性試験結果と相関している。これらの知見は死体皮膚を処理して得られた角層シートを用いた値で、ストリッピングで採取したヒト生体角層の評価は成されていなかった。昨年、死体皮膚を角層で処理したデータとヒト角層に界面活性剤を密封貼布した後サンプリングしたデータとの相関性を示し、新しい手法の妥当性を示した。今回、アトピー性皮膚炎患者から角層をサンプリングし、その重症度および健常人とのデータを比較したところ疾患群の平均値は0.70、健常人は0.78であった。これは、角層を構成する脂質の流動性の低下を示すもので疾患特異性であるものと考えられるが、重症度との相関はなかった。重症度については他の増悪因子など発疹の状態におよぼす要因は多岐にわたるためと思われた。
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