研究概要 |
色素性乾皮症(以下XP)患者の高頻度皮膚発癌における腫瘍免疫異常の関与を明らかにする目的で、XP遺伝子欠損マウス(以下XPマウス)のin vivoでの腫瘍排除能、及び腫瘍排除能に対する紫外線の影響を検討し、野生株マウスと比較した。 [方法]XPマウス由来の紫外線誘発性皮膚腫瘍から樹立したcell line 18を、両群マウスに皮下注し、経時的に腫瘍部を生検し組織学的に比較した。また、紫外線誘導性免疫抑制性cytokinesの一つであるTNF-αの皮膚での産生を比較した。 [結果] (1)非照射マウスに腫瘍細胞を皮下注した場合には、両群ともに6日目をピークに腫瘍塊に炎症細胞浸潤がみられ,その後腫瘍は壊死に陥り3週間後にはほぼ消退した。浸潤細胞の主体は好中球と単核球であった。 (2)紫外線照射後に皮下注した場合には、野生株マウスでは非照射時と同様に腫瘍は消退した。XPマウスでは、炎症細胞浸潤はみられるものの腫瘍塊の一部が壊死を免れて残存し,残存腫瘍細胞が成長・増殖した。 (3)紫外線照射後の表皮に抗TNF-α抗体に対する染色性が認められた。XPマウスではより少量の紫外線照射でも染色性が検出された。また、紫外線照射後の皮膚をhomozinateしてELISAで組織中のTNF-α蛋白量を定量したところ,野生株マウスでは検出できなかったが,XPマウスでは24時間後に上昇していた。 [結論]XPマウスの免疫学的腫瘍排除能は、非照射状態では野生株マウスと同等であるが、紫外線照射により容易に障害される。その機序として,浸潤細胞の抗腫瘍殺傷能の低下の関与が組織学的に示唆された。また,XPマウスの皮膚での紫外線照射によるTNF-αの過剰産生も関与すると思われる。
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