研究概要 |
多形紅斑(erythema multiforme,以下EM)は種々の感染症,薬剤,悪性腫瘍,慢性疾患に続発する原因不明の皮膚疾患であるが,なかでも単純ヘルペスはEMの原因として大きな割合を占める。一方種々の薬剤により誘発されるEMも多くしばしば重篤である。今回,単純ヘルペス(herpes simplex virus,以下HSV)に関連したEM(HSVassociated EM,以下HAEM)と薬剤誘発性EMを比較検討した。HAEMの皮膚病変の生検標本では81%がHSVDNA(ここではDNApolymerase gene,以下pol)陽性で,さらにpol DNA陽性患者の標本ではRT-PCRないし免疫組織化学的染色によりpol遺伝子の発現が確認された。HAEMの病変部ではインターフェロン-γ(IFN-γ)陽性単核球の浸潤が高率に認められ,HAEM病変部のpolの発現とIFN-γ陽性細胞浸潤は有意に相関していた。これに対し薬剤誘発性EMでは全例がpol DNA陰性で,INF-γ陽性細胞の浸潤は少なく,表皮における腫瘍壊死因子-α(TNF-α)が高率に陽性であった。また,pol遺伝子の発現されている患者の末梢血ではVβ2T細胞が優位で,さらにこのT細胞がHAEM病変部に浸潤していた。以下よりHAEMはpol遺伝子の発現に関連した特異的なT細胞による遅延型過敏反応である可能性が示唆された。これに対し薬剤誘発性EMではTNF-αによる表皮障害が関与していると考えられた。
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