研究概要 |
ヒト培養細胞株を用いて,細胞周期を修飾するさまざまな薬剤を作用させ,その放射線増感効果について検討した.41度の温度による低線量率照射の増感は,温熱によるG1ブロックで放射線抵抗性のS期細胞が減少することとHSPの発現抑制による熱耐性の抑制が機序の一因であると考えられた.低濃度のカフェインによる照射効果の増感は,照射によりG2期に集まった細胞の回復を阻害したまま細胞周期を進行させ,照射からの回復を阻害し細胞死へ導いたためと考えられた.照射,41度,カフェインを同時に行うと細胞死はさらに増加し,細胞周期の変化は強いG1ブロックであったがウエスタンブロットによるHSP70の解析では,三者の併用はHSPの産生を抑制する結果が得られた.また細胞をG2期に集積させるタキソールとメチルキサンチンを同時に作用させると,殺細胞効果を減少することが明らかとなり,メチルキサンチンにより起こるG1 blockが,細胞のG2期への集積を減少させたためと考えられた.HSP抑制効果をもつKNK437は,慢性熱耐性の抑制,細胞増殖の抑制及びG2ブロックを引き起こす.KNK437は温熱のみならず放射線の効果も増感する事が明らかとなった.慢性熱耐性の抑制により,単独では細胞致死効果の認められない温度でも,大きな放射線増感効果が認められた.これらの結果をふまえ癌細胞のもつストレス応答シグナルをコントロールすることにより癌治療増感をはかる研究を進めている.
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