研究概要 |
FMRIにおける信号上昇領域を統計的に解析することで、特定の課題に対する一次感覚性運動野、一次視覚野、一次聴覚野などの脳機能局在をはじめ、近年ではさらに高次脳機能の局在が画像化されている。本研究ではEPIを用いた脳のFMRIを行い、短期記憶負荷の異なる形状分別課題における大脳皮質間での信号上昇及び信号低下の相互関係を検討した。SIGNA HORIZON 1.5T MRI装置を用いて10名の右利き健常被検者(男性5名、女性5名)に対してFMRIを行った。撮像には、gradient echo type EPI(GE-EPI;TR/TE;3000/50msec,Matrix;64X64,FOV;240mm,Thickness;5mm,Flip angle;90)を用いた。脳全体を含む12横断面を設定し、3秒ごとに連続42回の撮像を行った。課題として1.5秒間隔で30秒間投影される手指形状に対し、同一の手指形状を提示する課題(zero back memory)、一つ前の手指形状を絶えず提示する(one back memory)課題、二つ前の手指形状を絶えず提示する(two back memory)課題をそれぞれ行い、難易度に差を与えた。手指形状画像の作成及び投影にはパーソナルコンピュータ及び液晶プロジェクターを用いた。手指形状を提示するzero back memory課題では左中前頭回、両側下前頭回および左紡錘状回から舌状回に有意な賦活部位が認められた。一方、二つ前の手指形状を絶えず提示するtwo back memory課題ではzero back memory課題の賦活部位に加えて、前補足運動野、前帯状回の活性が認められた。短期記憶課題の負荷を与えることで、前頭葉内側面に新たな脳賦活領域の同定が可能であった。今後、視覚領域から背外側前頭前野、前頭葉内側面に至る支配経路の相互関係の解明が必要になると考えられる。
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