研究概要 |
肝臓は、動脈、門脈系の二重の血流支配を受けており、血流の多い臓器である。このため、経皮的マイクロ波腫瘍凝固療法(Percutaneous micowave tumor coagulation therapy,PMCT)で大きな肝腫瘍を治療する場合、血流による冷却効果のため十分な凝固範囲が得られない場合が多い。我々は、血管造影のテクニックで低侵襲的に肝の血流を低下させる方法を考案した。本研究では、いずれの肝血流を低下させることによって、もっとも冷却効果を低下させ、PMCTでの凝固範囲を拡大できるかを検討するために動物実験を行なった。 方法は、前年度と同じく生体豚Landraceを全身麻酔下にて開腹後、コントロールとしての非阻血群(C)、および肝動脈阻血群(A)、門脈阻血群(P)、肝動脈および門脈阻血群(AP)、肝静脈閉塞群(V)、肝動脈および肝静脈閉塞群(AV)と6群に分けて、どの血管系の血流を遮断した場合、もっとも60watts,1分凝固のMCTで凝固範囲が大きいかを調べた。肝動脈、門脈は血管テープで阻血し、肝静脈はバルーンカテーテルによる血流遮断を施行した。術後ただちに全肝を摘出し、凝固部最大割面を計測し、統計処理等により比較した。この結果、(P),(AP),(V),(AV)群の間で凝固範囲に有意な差は無かったが、これらと(C),(A)群の間では有意な差があった。(A)群と(C)群の間には、前年度のデータでは有意差があったが、個体数の増えた今年度のデータでは有意差が見られなかった。また、これらそれぞれの群で、阻血前後の肝血流量をレーザードプラ血流計測装置で経時的に計測したところ、(AV)群でもっとも肝血流の低下が見られた。以上より血流遮断の方法としては肝動脈および肝静脈閉塞が最も有効と考えられた。また動脈のみの閉塞では、凝固範囲の拡大が期待できないと考えられた。
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