研究概要 |
心臓が収縮拡張を行なう弾性体の一つと考えた場合に,心筋梗塞を起こしていない正常心筋部位と比較して心筋梗塞部位は比較的硬く、弾力性が正常と異なるために,梗塞部位と正常部位との境界では歪みが発生する.この歪みによる応力で心筋梗塞が進行するといわれている。そこで、MR装置により生体内の圧力を定量して画像表示する技術を開発するにあたり、In vitro実験でその可能性について検討した。 マイクロバブル造影剤を封入した混濁液を加圧して撮影した場合の、圧力と信号強度との関係について検討した。非常に小さな気泡(マイクロバブル)を封入した液体に対して陽の圧力をかけると気泡の容積が小さくなり、結果としてMR I信号の大きさも変化するという現象を利用するために、撮影シーケンスおよびパラメータはT2強調を主体にして実験をおこなった。臨床用MR装置を用いて、以下のような結果が得られた。 (1)造影剤を調整後の時間経過と信号強度との関係 造影剤の調整後、時間経過とともに信号強度が増加した。信号強度が増加した原因は、マイクロバブルが時間の経過とともに壊れた為に起きたと思われる。圧力が大きいほど、マイクロバブルが速く壊れる傾向がある。しかし、この造影剤を超音波装置で使用する場合と比較して、MR装置ではマイクロバブルが長時間保たれる事が理解された。 (2)圧力とT2値との関係 試験管内の圧力を高くすると、T2値が短縮傾向を示した. (3)圧力と信号強度との関係 圧力を増加すると信号強度は低下傾向を示した。 以上の結果を第27回日本磁気共鳴医学会大会および第85回北米放射線学会で報告した.この研究成果が日本磁気共鳴医学会において高く評価され、大会長賞を受賞した.
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