研究概要 |
本研究は,非電離放射線,特に特に環境問題においてその影響が懸念されている紫外線B波(波長280-320nm)により惹起される皮膚障害におけるxanthine oxidase/xanthine dehydrogenase(XO/XD)の役割を検討することを目的とする. 研究は以下の系にて実施した;(1)in vitro系:ウシミルクあるいはラット肝臓から抽出精製したXO/XDを添加した培養ヒト皮膚繊維芽細胞およびヒトリンパ球に紫外線B波を照射した場合の細胞急性障害をトリパンブルーによる生存細胞数計数により検討した.(2)in vivo系:ヘアレスラットに紫外線B波を照射して,皮膚の細胞急性障害をDNA Ladderingを指標に測定すると共に,XO/XDの特異的阻害薬であるallopurinolおよびその活性代謝物oxypurinolを経口投与することによって細胞急性障害への効果を検討した. in vitro試験の結果,培養ヒト皮膚線維芽細胞では0.9Jcm^<-2>の紫外線照射によって,また,ヒトリンパ球では4.5Jcm^<-2>の紫外線照射によって50%の細胞が死に至った.同系にウシミルクXO/XDを2.0 U ml^<-1>加えた系では,ヒト皮膚線維芽細胞では4.3%,ヒトリンパ球では7.7%死亡率が増加した.しかし,この増加率は統計的に有意ではなかった. in vivo試験の結果,紫外線照射量とヘアレスラットの皮膚細胞死との間には比例関係が成り立つことが明らかとなった.またこの時,[^3H]尿酸を用いた皮膚XO/XD活性を測定したが,紫外線照射によってXO/XD活性は有意に変化しなかった.更に,allopurinolおよびoxypurinolの経口投与時の最大血中濃度がそれぞれ1時間および5時間であることを確認した後,当該時間での前投与後,同様にヘアレスラットに対する照射試験を行ったが,XO/XD阻害薬の効果は確認されなかった.
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