研究概要 |
活性酸素生成及び分解調節が広い意味での生体防御と考えられる。好中球活性化過程でのホスホリパーゼA_2によるリン脂質分解産物であるリゾリン脂質のうち、リゾホスファチジルコリンは活性酸素生成能を増強するが、リゾホスファチジン酸(LPA)は抑制する。われわれは加齢に伴うLPAの過剰生成がスーパーオキシド(SO)生成能低下に関与していることを報告し(FEBS Lett 394:149,1996)、抑制因子による好中球活性化調節メカニズムの存在を示唆した。LPAは他の細胞系においては受容体を介し低分子量G蛋白の活性化やアクチン重合を起こすが、好中球ではこの受容体の存在は確認されていない。そこでLPA処理好中球において好中球SO生成におよぼす効果を検討した。ヒト末梢好中球を分離し、シトクロムc還元法にて測定したphorbol myristate acetate(PMA)刺激SO生成能はLPA処理にて低下した。しかし、LPA処理好中球でアクチン重合を蛍光色素Oregon Green 488 Phalloidin(Molecular Probes)を用いてflow cytometryにて測定したところ、アクチン重合は見られなかった。よって、受容体を介した通常の経路でのLPAの効果では好中球活性酸素生成能に対する効果は説明ができないと考え、nitric oxide(NO)synthase inhibitorのN^G-nitro-L-arginine methyl eater(L-NAME)存在下でSO生成能を測定したところ、LPAによる抑制効果は回復した。そこで、diaminofluorescein-2 diacetate(DAF-2 DA)を用いflow cytometryにて測定した結果、NO生成能はLPA非存在下に対しLPA存在下では増加し、LPAのNO産生への関与が示唆された。NOとSOが反応しperoxynitriteが生成されている可能性を考え、SO由来活性酸素とperoxynitriteを両方とも検知するdihydrorhodamine 123(DHR123)の蛍光強度をPMA刺激下でflow cytometryにて測定したところ、上記のLPAによる抑制効果はほとんど認めなかった。以上よりNO産生が関与しSOと反応することによりこの抑制効果が生じる可能性が示唆された。
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