研究概要 |
われわれはこれまで、マウス赤白血病(MEL)細胞にEtsファミリー転写因子PU.1を過剰発現させると、DMSOあるいはHMBAによる赤血球系細胞への分化が阻害され、細胞増殖が抑制され、最終的にはアポトーシスを誘導することを見い出し、その分子機構を解析してきた(Blood,89,1383-1393,1997)。また、PU.1には転写の補助因子であるCBPが結合することも見い出し報告した(Oncogene 18:1495-1501,1999)。PU.1過剰発現によるMEL細胞の増殖抑制、アポトーシス、分化抑制の分子機構にCBPが関与しているかどうかを検討した。CBPを導入したMEL細胞ではPU.1過剰発現による増殖抑制およびアポトーシスは回避された。しかし、PU.1結合部位を欠損したCBPの発現ベクターを導入したMEL細胞ではそれらは回避されなかった。一方、PU.1過剰発現による赤血球分化の抑制はいずれのCBPの発現ベクターの導入によっても解除されることはなかった。以上の結果から、PU.1過剰発現による増殖抑制とアポトーシスの誘導にはその他の転写因子とのCBPの競合あるいは相互作用が関与しているが、赤血球分化の抑制にはCBPは関与していないことが示唆された。また、CBPがPU.1のみならず他のEtsファミリー転写因子Spi-B,Fli-1にも結合するかどうか検討したところ、これらすべてと結合することが明らかとなり、Etsファミリー間のCBPを介した「正」および「負」のクロストークが推測された。
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