マウス副睾丸周囲脂肪組織には副腎皮質刺激ホルモン受容体(ACTH-R)遺伝子の発現が認められ、その発現量はノーザン解析により副腎の約10分の1であることが明らかになった。副睾丸周囲脂肪組織に発現しているACTH-R mRNA量はマウス生体へのACTH-Z(2IU)投与によって有意な変化を示さなかった。また、デキサメサゾン(100μg)投与による内因性ACTHの抑制ならびに下垂体摘出による内因性ACTHの欠損によっても同組織に発現しているACTH-R mRNA量は副腎とは対照的に有意な変化を示さなかった。 一方、マウス前脂肪細胞株であるNIH3T3-L1 細胞を一定の条件で脂肪細胞に分化させて行ったin vitroの検討では、ACTH1-24(10^<-12>〜10^<-8>M)の添加により、マウス副腎由来の細胞株であるY-1細胞とは逆に、ACTH-R mRNA量の有意な減少が認められた。この現象は1mMジブチリルサイクリックAMP(dbcAMP)の添加によっても再現されたことから、副腎・脂肪細胞両組織におけるACTH-R遺伝子の転写調節機構の違いはA-kinase活性化以降での相違であることが推測された。10^<-11>〜10^<-7>Mデキサメサゾン添加ではACTH-R mRNA量の有意な変化はみられなかった。新規のRNA合成を阻害するアクチノマイシンDを添加して同様の検討を行ったところ、dbcAMP添加によるACTH-R mRNA量の減少はdbcAMP添加によるACTH-R mRNAの崩壊のみならず、転写レベルでの現象であることが確認された。
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