【背景・目的】壊死性腸炎の病態生理には、酸化ストレスによる組織障害がその一因であると考えられている。母乳中の抗酸化物質がfree radicalの除去に関与する可能性を証明するため、母乳中鉄不飽和型ラクトフェリンの酸化ストレスに対する防御作用を、消化管由来細胞株を実験モデルとして検討した。 【方法】消化管由来細胞株としてIEC-6細胞を用いた。血清添加培地でconfluentまで培養し、鉄不飽和型ヒトラクトフェリン50μg/mlを含む/含まない(対照)無血清培地で24時間培養した。さらに、0、0.1、0.25、0.5mMの過酸化水素を作用させ、洗浄後通常の培地に変換し、24時間後の生存細胞数をneutral red uptake法によって評価した。 【結果】0、0.1、0.25、0.5mMの過酸化水素を作用させたことによって対照の生存細胞数は、用量依存性に低下し、それぞれ100、100.7、76.8、21.4%であった。これに対し、鉄不飽和型ヒトラクトフェリンを予め作用させた場合には、用量依存性に低下するものの、その程度は軽く、101.5、100.1、95.7、47.7%となり、対照に比して、0.25、0.5mMの過酸化水素刺激時において有意な生存細胞数の増加が認められた。 【結語】鉄不飽和型ラクトフェリンによる前処理により、過酸化水素刺激後の生存細胞数が有意に増加した。母乳中の鉄不飽和型ラクトフェリンは、不要な鉄イオンをキレー卜することにより、消化管粘膜におけるfree radicalの産生を抑制しているものと推測される。
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