研究概要 |
【目的】2型糖尿病発症に関与する遺伝子は明らかにされつつあるが、これと対応する環境因子は明らかではない.核内ホルモン受容体を作用点とする内分泌攪乱物質dioxinがPPARγを標的として糖脂質代謝に影響を及ぼしているか否かを知るため、マウス前脂肪細胞にdioxinを作用させて分化とPPARγ遺伝子発現、及び変異型Pro12Alaの反応性の相違につき検討した.【方法】1)DEX、IBMX、INSにより3T3-L1の分化を誘導、dioxin(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin)50nMを培地に添加、対照群としてDMSO 50nMを添加した.2、7、14日目にOil Red O染色した.2)14日目にPPARγ mRNA発現をノーザン解析を行った.3)PPARγ2遺伝子のcodon 12がProである野生型とAlaである変異型をpCMVベクターに組み込み、L1細胞で強制発現させた.更に分化の誘導とdioxin暴露を行い、14日目にPPARγのmRNA発現をノーザン解析を行った.【結果】1)Oil Red Oによる染色性は2、7日目では差を認めなかったが、14日目ではdioxin群は対照群と比較して染色性が低く、中性脂肪合成の阻害効果を示した.2)PPARγ mRNA発現量はdioxin群において対照群に比較して30%抑制し、PPARγの転写抑制を介した脂肪合成の抑制であることを示唆した.3)PPARγ2遺伝子のalleleタイプによっても反応性に差を認めなかった.【考察】dioxinはPPARγ遺伝子発現の抑制を介してL1における脂肪合成を抑制し、脂肪細胞への分化も抑制した.脂肪細胞における主なインスリン作用である脂肪合成を低下させ、インスリン感受性の高まる分化を抑制したことから、dioxinはインスリン抵抗性を来す環境因子であると推定された.
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