研究概要 |
ウェルナー症候群は糖尿病を高頻度に発症することが知られており,そのヘテロキャリヤーでも老化現象が早期に生じている可能性がある.今回,ウェルナー症候群ヘテロキャリヤーと糖尿病発症の関連を検討するため,健常者と糖尿病患者とで同変異遺伝子の保因者率に差があるかどうかを検索した. 糖尿病患者322人と健常者411人に,この研究の目的などのインフォームドコンセントを行った後,末梢血液を採取し,DNAを抽出した.平均年齢は糖尿病患者59.1±11.1歳,健常人48.2±10.4歳,性別はそれぞれ44.2%,51.2%が男性であった.肥満を表すBody mass indexはそれぞれ23.5±4.7,23.5±2.9と有意差を認めなかったが,過去の最大BMIはそれぞれ27.4±4.3,24.6±2.8であり,糖尿病患者に有意な肥満歴を認めた.また,糖尿病の家族歴はそれぞれ53.2%と26.4%と糖尿病患者に有意に糖尿病の家族歴を認めた. ウェルナー症候群遺伝子部位を含むDNAをPCRで増幅した後,ELISA Amplification Systemを使用してウェルナー症候群遺伝子の変異アレルの有無を検出した.最終的に,PCRで十分にDNAが増幅し,解析し得た症例は糖尿病患者で266人,正常人で398人の計604人であった.日本人ウェルナー症候群遺伝子のほぼ60%を占めるMutation4およびMutation6を検索したが,今回のわれわれの検討では,変異遺伝子を有する症例は存在しなかった. 過去の報告では,一般の健常者内で0.6%のヘテロキャリヤーが存在すると報告されているが,今回われわれが検討した範囲では,ウェルナー症候群遺伝子のキャリヤーは存在しなかった.これは地域差による可能性があること,また,対象がいまだ少数であった可能性があると考えられた.
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