研究概要 |
甲状腺腫瘍におけるテロメラーゼ活性とテロメア長の検討 ヒト癌組織(胃癌、大腸癌、肝癌、肺癌など)におけるテロメラーゼ活性が報告され、腫瘍マーカーとしてテロメラーゼ活性が注目されている。テロメラーゼは染色体末端に存在するテロメアの伸長、維持に関与する逆転写酵素である。テロメアは(TTAGGG)の6塩基の繰り返し配列を示し、染色体の分解、再構成、融合、消失などから染色体を保護、およびその対合に関与すると考えられている。テロメラーゼ活性は正常リンパ球、造血前駆細胞、生殖細胞、消化管粘膜の増殖域細胞でその活性が発現している以外、他の体細胞では発現を認めない。また、癌細胞ではテロメラーゼ活性を高頻度で発現していることが明らかにされるに従い、これまでに知られている癌化に伴う遺伝子発現変化の中では最も相関性が高い変化であることが明らかになり、腫瘍マーカーとしての有用性が期待されるに至った。今回、我々は21例の甲状腺腫瘍と正常甲状腺について、テロメラーゼ活性の発現およびテロメア長測定について検討した。 テロメラーゼ活性は、11/12例の甲状腺癌と3/9例の甲状腺濾胞腺腫で陽性を示した。平均テロメア長で甲状腺癌と甲状腺濾胞腺腫は、その母地である正常甲状腺組織より有意に短縮を認めた(p=0.0055,p<0.006)。さらに、テロメラーゼ活性があり、平均テロメア長短縮差(甲状腺腫瘍テロメア長-正常甲状腺組織テロメア長)が2kbp以上である甲状腺癌は11/12例、甲状腺濾胞腺腫は1/9例であった。以上より、テロメラーゼ活性と平均テロメア長短縮差を重ね合わせると甲状腺癌と甲状腺濾胞腺腫を鑑別できる可能性が示唆された。
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