研究概要 |
吻合部内膜過形成(AIH)は依然として血行再建術の後晩期閉塞の最大の原因である。AIHの原因の一端として局所的血行動態異常に起因する内皮細胞障害、同細胞における接着分子の過剩発現、引き続くリンパ球、好中球の内皮細胞への接着進入が重要であり、また同過程のブロッキングによりAIHは抑制されるという仮説に至り、以下の実験を行った。 1)吻合部内膜過形成(AIH)における接着分子の発現の状況の検討:家兎の大動脈に人工血管(ダクロン)を中枢側は端々、末梢側は端側吻合して血行再建術のモデルとした。術後1日、1週、4週、12週目に還流固定に引き続き、吻合部を含めたグラフト片を採取。凍結切片をクリオスタッドにより作製して免疫染色に供した。ABC法によりICAM-1,LFA-1,VLA4の内皮細胞表面での発現を観察した。接着分子の発現は吻合部のfloor部とtoe部で高い傾向にあった。画像解析装置による内膜の肥厚度の測定でも同部位で顕著な内膜肥厚を認め、接着分子との発現に相関関係があることが示唆された。2)接着分子のブロッキングによるAIH抑制効果の検討:家兎を3群に分け、A群には抗LFA-1抗体、抗ICAM-1抗体を、B群には単球と内皮細胞に関連する抗VFA-5抗体を、C群には対照として生理食塩水を手術前日から術後4日目まで連日皮下投与する。以下は今後の検討予定。得られた切片から、画像解析装置にてAIHのfloor部及びtoe部の面積を測定し3群間で比較。抗PCNA抗体によりAIHを形成する平滑筋細胞の細胞活性を、抗CD44抗体ではリンパ球の存在を、抗RAM1抗体で単球の存在を、抗胎児型ミオシン抗体では平滑筋細胞のphenotypeを検討し接着分子阻害のAIHを構成する細胞に対する影響を検討する。
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