研究概要 |
慢性拒絶反応におけるTGF-β-blockの効果を検討した。腎静脈を予めクランプしてMutated TGF-β Type II recepter-adenovirus或はcontrol-adenovirusを腎動脈から注入し20分間放置、Mutated TGF-β Type II recepter及びcontrol-adenovirusをドナー腎に導入した。実験動物はドナー:F344(RT1lvl),レシピエント:Lew(RT1l)を用い、micro surgeryで同所性に腎移植を施行した。実験群は以下の3群である。1群:control-adenovirusを導入された腎をドナーとするアログラフト、2群:Mutated TGF-β Type II recepterを導入された腎をドナーとするアログラフト、3群:control-adenovirusを導入された腎をドナーとするアイソグラフト、timepointは3日目,5日目,7日目,14日目,(n=3/time point/group)、8週目,16週目,24週目,32週目,52週目(n=4/time point/group)と設定し、以下の検索を行い結果を得た。 i)遺伝子発現の確認:X-gal染色とRT-PCRで遺伝子発現の有無を確認し、約30%の腎に発現を認めた。 ii)移植腎機能の評価:術後2週間毎に尿中蛋白量を測定した。1群では、12週以降尿蛋白量は漸次増加し血清Cr値も漸次上昇した。一方2群では一部で尿蛋白量が減少したラットが認められ、これらは血清Cr値も低下していたが、統計学的有意差は認められなかった。 iii)病理組織学的検索:1群では、8週頃から糸球体内と血管周囲に軽度の炎症性細胞浸潤が認められ、12週には糸球体、血管周囲の炎症性細胞浸潤と尿細管に萎縮所見を認めた.16週には炎症性細胞浸潤はピークに達し、糸球体に種々な程度の硬化像を認め、間質では硬化した糸球体の周囲を中心に尿細管の萎縮や線維化所見を認めた。2群では8週において6匹中2匹に炎症性細胞浸潤低下を認めたが、他のラットでは1群と差異を認めなかった。今回の結果は遺伝子発現が安定していない事に起因すると考えられ、今後さらに検討をする予定である。
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