研究概要 |
【目的】平成11年度の研究では、腹膜炎の影響は気腹の方が開腹に比較して少ないことが示唆された。平成12年度は腹膜炎状態において、開腹ならびに気腹がもたらす免疫学的変化の機序に関してさらに研究を進めた。【方法】1)6週齢雄F344ラット(ラット)を、a)麻酔のみの群,b)開腹群,c)気腹群の3グループを設定し、大腸菌(10^6)を投与群した(各n=100)。2)a)群では30分間麻酔した。b)群では剣状突起から恥骨までの腹部正中切開で開腹した後,30分後に4-0Vicryl糸で閉腹した。c)群は18G気腹針を刺入し、4〜6mm Hgの腹腔内圧で炭酸ガスを30分注入した。3)手技終了後2時間、4時間、12時間、24時間、48時間後にsacrificeし腹水の採取と採血を行った。5)ELISA法により血中のTNF-αとIL-6の測定、ならびに白血球数とその分画を検討した。また腹水中マクロファージ(CD4陽性細胞)の数とそのcytotoxicityとsuperoxide産生能を測定した。結果】手技終了後2時間より、すべて群で白血球数の増加が認められ、48時間後には正常に復した。白血球増加は単球とリンパ球の増加によるものであった。b)開腹群の血中TNF-αとIL-6値は、手技後2時間から48時間まで通して、他2群に対する有意な上昇が認められた。腹腔内総細胞数も、b)開腹群がa)麻酔のみの群やc)気腹群に比較して有意に多かった。またCD4陽性細胞の割合は、3群間に有意差はなかった。なお、CD4陽性細胞のcytotoxicityとsuperoxide産生能に関する有意差は3群間に認められなかった。【まとめ】腹膜炎の状態において、気腹群の炎症反応は開腹群に比較して軽微であり、bacterial translocationを増悪させなかった。このデータからは、腹膜炎の状況下においても、積極的に腹腔鏡下手術に取り組んでも問題ないと考えられた。
|