研究概要 |
来院時Glasgow Coma Scale scoreが8点以下の重症頭部外傷患者17例を無作為に低温群(受傷後48時間34℃に冷却、3日間で37℃に復温)9例と常温群(5日間37℃に維持)8例に分け、多核白血球(PMNL)だけでなく単核球やリンパ球でも熱ショック蛋白質(HSP)の発現量に差異があるかどうかを調べた。各々、来院時〜1病日(0-1)、2〜5病日(2-5)、6〜14病日(6-14)の3つの時期に採血を行い、単核球及びリンパ球におけるHSP発現量(HSP27,HSP60,HSP70,HSP90)をフローサイトメトリーを用いて測定した。 平成11年度の研究実績概要で報告したように、多核白血球の場合はHSP60の発現量だけが低温群の総ての時期で常温群の60%に抑制されていた。これに対して、リンパ球及び単核球では、HSP27,HSP60,HSP70,HSP90ともに総ての時期で低温群の発現量が常温群の50〜80%に抑制されていた。発現量の絶対値で比較すると、常温群のHSP27,HSP70,HSP90の発現量は正常値の約2倍に増加していたが、HSP60の発現量だけは正常値と同程度であった。 さらに、健康成人(ボランティア7人)の白血球を用いて多核白血球におけるHSP発現量に環境温度が及ぼす影響をin vitroで調べた。その結果、37℃、34℃、26℃でのHSP60の発現量は、それぞれ141.3±15.9、107.0±27.5、100.9±31.6(fluorescence/cell)で、環境温度が低下するに従ってHSP60の発現量が有意に抑制されていた(37℃v.s.34℃及び37℃v.s.26℃ともにp<0.05)。この実験結果より、中等度の低温(34℃)により多核白血球中のHSP60発現量が抑制されることがin vivoだけでなく、in vitroでも証明されたことになる。 以上の結果は、平成11年度の研究結果も含めて英文医学雑誌に投稿中である。
|