1)脳腫瘍手術摘出標本である低分化型神経膠腫(LGA)5例、退形成神経膠腫(AA)4例、神経膠芽腫(GBM)25例、髄膜腫27例、神経鞘腫16例、正常脳組織及び脳腫瘍細胞株8株におけるHGFA、HAI-1、HAI-2のmRNAレベルの発現をRT-PCR法にて調べた.HGFAは、神経膠腫では一様に発現しているが、悪性度の異なる腫瘍間に明らかな発現の相違は見られず、一方で髄膜腫及び神経鞘腫においては全例にて発現していた.HAI-1は、神経膠腫ではほとんど発現がなく、一方で髄膜腫及び神経鞘腫では全例で発現していた.HAI-2は、正常脳組織およびLGAにおいて強く発現し、膠芽腫およびglioma細胞株ではほとんど発現していなかった。一方で髄膜腫及び神経膠腫では全例で発現した。 2)次に、上記手術摘出標本を用いて、HAI-1、HAI-2の発現を免疫組織化学的に検討した.HAI-1は正常脳組織、神経膠腫ではほとんど染色されなかったが、髄膜腫及び神経鞘腫では腫瘍細胞の膜表面に強い染色性を示した.HAI-2は、正常脳組織、LGAではneuron及びglia細胞を含めてびまん性に発現していたが、GBMでは低下しており、組織学的悪性度の逆相関していた.一方、髄膜腫及び神経鞘腫では腫瘍細胞の細胞質に発現しており、HAI-1との局在が全く異なっていた。 3)神経膠腫の組織学的悪性度間でのHAI-1、HAI-2mRNAの発現量を定量化するためにNoerthern blotを行った。HAI-1は神経膠腫の手術摘出標本、細胞株において1例を除いて全く発現していなかったが、髄膜腫および神経鞘腫では各々4例(15例中)、6例(7例中)で発現がみられた.HAI-2は正常脳組織、LGAにて強くは発現していたが AA、GBMおよび細胞株では全く発現せず、RNAレベルにおいても組織学的悪性度の逆相関していた。一方、髄膜腫および神経鞘腫においては全例で発現していた。
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