研究概要 |
言語の想起・産生(word generation)に関わる神経機構へのアプローチの一つとして、しりとり課題などの自由連想課題による脳活動の検討が行なわれる.これらの方法は語想起のタイミングが測れない為に、本来時間分解が得られない.PETやfMRIによる検討では、言語優位半球に優勢な反応が報告されている【杉下守弘;失語症からみたことばの神経科学,45-50,1997/成相直;脳と神経53(2),107-116,2001】が、それらの領域の時間的関わりについての情報が得られていない.そこで外部から言語や形態の属性を持たない刺激(純音・閃光刺激)を与え、それをタイミングとしたしりとり課題を行なうことによって、word generationの際の脳内賦活部位及びそれらの経時的過程に関しての情報が得られると考え、以上を時間分解に優れるMEGを用いて検討した. Word generationに関わる神経機構は純音・閃光刺激単独のcontrolでは賦活せず、課題時においてcontrolよりも加算平均波形のroot mean square(RMS)にパワーの増大が生じると仮定し、RMSを比較検討している.現段階では被験者数は少ないが、幾つかの潜時帯においてcontrolと比較して課題時でRMSのパワー増大を認め、その潜時帯でのdipole estimationを行なった.その結果、左中下側頭回後方、前頭弁蓋部、紡錘状回等の、従来臨床病理対応や大脳皮質電気刺激による検討でword generationの関連領域とされている領域にdipolarityを得た.今後多被験者での検討並びにword generationの応答により同期した刺激を与えられる課題の確立が必要と考えている.
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