研究概要 |
本研究ではヒトと類似した組織学的構造を有する白色日本家兎の棘上筋腱骨付着部を用いた。肩関節全体を摘出して、自然下垂位で4% paraformaldehyde溶液を用いて24時間固定した。上腕骨を含めて棘上筋腱中央部で線維方向に沿って切り出し、hematoxylin-eosin染色による組織標本を作成した。得られた組織標本の顕微鏡写真を撮影し、拡大して現像した。この写真の輪郭をトレースして、Mentat II (ver.3.3.0,日本MSC.MARC)上でプロットした。 棘上筋腱骨付着部は、組織学的に腱線維、非石灰化綿維軟骨、石灰化線維軟骨、骨および関節軟骨から構成され、緩やかに軟組織から硬組織へと変化している。今回筆者は、こうした腱骨付着部における線維軟骨の存在をモデルに組み込んだ。汎用有限要素解析ソフトウエアMarc (ver.k7.3,日本MSC.MARC)を用いて、上腕骨頭の遠位中央の節点をX,Y軸方向に固定し、腱の近位端に文献値に基づいて16MPaの引っ張り荷重をかけ、その際生じるVon Mises stressおよびshear stressの分布を解析した。 解析の結果、Von Mises stress、shear stressともに、腱骨付着部関節面側に集中が見られた。特に、shear stressは腱骨付着部に限局して高度の集中を起こしていた。これに対して、滑液包面側には応力の集中は全く見られなかった。また、応力集中の起こる部位は臨床的に腱板の微小断裂が見られる部位によく一致していた。このことは、応力集中が腱板断裂の発生要因になり得ることを示していると考えている。
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