研究概要 |
昨年度は、アグリカン遺伝子の多型のうち少ないvariable number of tandem repeat(VNTR、短いcore protein)を持つものは、20歳台という若年期にもかかわらず多椎間の椎間板変性を起こしやすいリスクがあること、また少ないVNTRをもつものは上位腰椎の椎間板変性を有する傾向が高いことを明らかにし報告した。本年度はビタミンDレセプター遺伝子(VDR gene)およびエストロゲンレセプター遺伝子(ER gene)の多型が若年者の腰椎椎間板変性のリスクになりうるかを検討した。20歳台の211名の対象者において、同意を得た上でMRIを撮像し椎間板変性およびヘルニアの有無を検討した。椎間板変性の程度の検討はSchneidermanの分類を用い、ヘルニアはMacNabの分類を用いた。さらに末梢血よりgenomic DNAを採取し、VDR geneのTaq I,Apa I制限酵素を用いたアレル(それぞれにintron8とexon9に存在)とER geneのXba I,Pvu II制限酵素を用いたアレル(ともにintron 1に存在)の解析を行った。その結果、VDR geneではTtのアレルを持つものは高度の椎間板変性を呈し、椎間板ヘルニアの頻度が高いことが解った。一方、ER geneではいずれのアレルも椎間板の変性およびヘルニアに関連はみられなかった。以上の事実から、椎間板変性には遺伝的背景が存在することが強く示唆され、特にアグリカン遺伝子の少ないVNTRとVDR geneのTtアレルを持つものはそのリスクが高いと考えられた。
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