研究概要 |
イヌ実験的変形性関節症(OA)モデルおよびOA患者の人工膝関節置換術時に採取した変性軟骨組織の検討から、1)OA軟骨の変性・破壊過程に軟骨細胞のアポトーシスが関与すること、2)関節液及び軟骨組織中に多量の一酸化窒素(NO)あるいはその代謝産物が検出されること、3)OA軟骨の組織学的スコアとDNA断片化をきたしたTUNEL染色陽性軟骨細胞率が有為に正の相関を示すこと、4)特にOAの初期病変においてはニトロチロシン(NT)陽性細胞率とOAスコアが有為に相関する結果から、OA軟骨の破壊過程でNOにより誘導される軟骨細胞が深く関与することが示唆された。このNOによる細胞障害後に軟骨細胞のアポトーシスへ至るシグナル伝達経路を調べる目的でヒトOA軟骨に対するCaspase-3,-9に対する免疫染色で検討したところ、それぞれOAスコア、TUNEL陽性細胞率、NT陽性細胞率と強い正の相関関係を示した。このことから、NOによる軟骨細胞障害はミトコンドリアにおけるBcl-2、Bax等のアポトーシス関連蛋白の均衡を崩し、チトクロームCの遊離、Caspase-9の活性化を誘導し、アポトーシスの実行部隊であるCaspase-3の活性化を導くものと考えられた。一方、モノヨード酢酸を膝関節内に投与することにより作成したラットOAモデルに抗酸化剤PDTCを連日3週間筋肉内投与を行い、NOの抑制効果および軟骨破壊の防止効果を検討したが、コントロール群と比較して有為な改善は認められなかった。今後は軟骨細胞のアポトーシスを制御するためにCaspase阻害剤の検討もなされるべきであると考える。
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