研究概要 |
1:本研究は、延髄呼吸中枢における、オピオイドの作用部位を明らかにすることを目的としている。 2:I)平成11年度の研究において、アダルトラットにおいては、現在呼吸のリズム生成部位として最有力候補とされている、延髄Pre-Botzinger complexに一致する部位にMu-オピオイド受容体が多く存在する事が証明された。 II)本年度は新生ラット(日齢3日)の延髄において、オピオイドの分布を免疫組織染色により検討した。カルビオゲノム社製ポリクロナール抗Mu-受容体抗体、Delta-受容体抗体(ウサギIgG)を使用し、ABC法により発色させた。新生ラットにおいても、Pre-Botzinger complexに一致する部位にMu-オピオイド受容体が多く存在する事が示された。一方、Delta-受容体は、延髄呼吸関連部位には、認められなかった。 3:I)オピオイドの呼吸抑制は、延髄化学受容体の二酸化炭素、pHの換気応答低下による二次的なものであるという意見がある。新生ラット延髄脊髄標本を用いて、Mu-作動薬、Delta-作動薬の中枢性化学感受性に及ぼす影響について、2%CO_2,10%CO_2により灌流液のpHを変えることにより検討した。 II)Mu-作動薬(DAGO)は、呼吸回数の二酸化炭素応答直線を右方偏位させたが、その傾きは変えなかった。同様にDelta-作動薬(DPDPE)もその傾きは変えなかった。 III)以上より、Mu-作動薬、Delta-作動薬投与下においても、延髄化学受容体の機能は保たれている事が示された。 4:以上の結果は、オピオイド(特にMu-作動薬)の呼吸抑制は、延髄の化学受容体(Chemosensitive area)を介して生じるのではなく、延髄呼吸のリズム形成中枢への直接作用である事を強く示唆する。
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