研究概要 |
本研究は2つの実験、実験1「全脳虚血前のイソフルラン投与による脳保護効果の用量反応関係」、および、実験2「全脳虚血後イソフルラン投与による脳保護効果の有無」から構成される。実験開始後、本研究とほぼ同様のプロトコールで研究を始めた研究者が海外にいることを知り、急遽プロトコールの見直しを行った。具体的にはイソフルランと同様に臨床麻酔で頻用されているセボフルランについても上記と同じプロトコールで実験を進めることとした。実験1では吸入麻酔薬投与濃度により5群(0.5,1.0,1.5,2.0,2.5 MAC;最小肺胞濃度)、1群あたり7〜8匹のラット数を設定した。イソフルラン群、セボフルラン群合わせて合計10群となる。平成13年3月現在、イソフルラン群の例数が揃った。また、平成12年末より病理学的検討のための標本作成も進めた。イソフルラン群の結果であるが、海馬CA1神経細胞死亡率(%)は、0.5MAC;92.0±7.6、1MAC;92.1±4.0、1.5MAC;90.2±12.5、2MAC;93.0±3.1、2.5MAC;92.1±4.2であった。統計学的に群間に有意差は認められなかった。結論として、虚血前のイソフルラン投与に脳保護効果はなく、用量反応性も認められなかった。しかし、死亡率(%)は濃度依存性に上昇し(0.5MAC;25、1MAC;16.7、1.5MAC;33.3、2MAC;41.2、2.5MAC;46.2)、特に2MAC、2.5MAC群での死亡はすべて痙攣によるものであった。低濃度群では、死亡の約半数は抜管後の呼吸器合併症が原因であった。以上、組織学的な所見に用量反応性は認められなかったが、高濃度イソフルランの虚血前投与は高頻度に痙攣を誘発し、生存率を低下させた。 今回、仮説と異なる結果が得られたが、今後この結果をさらなる研究に結び付けたい。
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