鍼鎮痛は、中枢および末梢に介在するオピオイドレセプターが関与し鎮痛を引き起こすと考えられている。また、炎症組織でオピオイドの遊離が確認されている。そこで、ラット逃尾潜時(Tail Flick Latency:TFL)および加圧式鎮痛効果測定装置(Randall Selitto Test)を指標にオピオイド拮抗薬を用いて、鍼鎮痛時のオピオイド物質が最も効果的に作用している鍼通電条件を検討した。鍼鎮痛法は、ラットにカラゲニンを左後肢足底に皮下投与し、痛覚過敏を生じさせ、経穴(足三里)の皮下前脛骨筋に直径0.20mmの鍼を約10mm刺入し、低頻度(3Hz)および高頻度(100Hz)通電を行った。その結果、低頻度(3Hz)通電では両側で鎮痛効果が見られたが、100Hz通電では、左後肢でのみ鎮痛効果が出現した。また、オピオイド拮抗薬ナロキソンの腹腔内投与により3Hz鍼通電による痛覚過敏の回復は通電終了3時間後に部分的に拮抗され、100Hz鍼通電では5時間後に部分的に拮抗された。一方、3Hz鍼通電による左後肢の痛覚過敏の回復は、ナロキソンの炎症局所への投与により有意に拮抗された。このことから、末梢でのオピオイドレセプターが関与した可能性が考えられた。
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