研究概要 |
腎細胞癌の診断で根治的腎摘除術を施行した症例のうち多発性腫瘍を認めた摘出腎標本28例からmicrodissection法を用いて各腫瘍病変のDNAを抽出し、マイクロサテライトPCR法によりalleliclossを解析した。マーカーは3p25-26(VHL領域),3p21-14,5q31(1RF-1領域),8p22,11p,17p(P53領域),18qに分布する計20個を使用した。各々の症例で主腫瘍と娘腫瘍における染色体変異のパターンを比較したところ、alleliclossのパターンが完全に一致したものが11例(39%),一致しないマーカーが2個以下のものが8例(29%)であり、これら19例(68%)は同一クローン起源である可能性が高いと考えられた。一方、4例(14%)は5個以上のマーカーにおいてalleliclossのパターンが異なっており、異なったクローン起源の可能性あるいは発癌早期に同一腎内に藩種した可能性が示唆された。またmicrosatellite shiftのパターンはallelic lossが一致した症例において必ずしも一致しておらず、癌進行の様々な段階でランダムに生じていると考えられた。 以上より同側多発性腎細胞癌の主腫瘍と娘腫瘍のクローンは大半は同一であるが、少数例は異なっていると考えられた。
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