研究概要 |
前年度の検討で精巣組織テロメレース活性の測定は、診断的精巣生検でSertoli cell only syndromeと診断された患者がTESE ICSI施行時に精子が回収できるか否かを予想するのに極めて有用であるという知見を得た。今年度は非閉塞性無精子症全体に症例を広げ検討した。対象は本検討に同意した33例に精巣組織のテロメレース活性を定量的に測定した。33例中12(36.4%)で精子が回収できた。精子が得られた症例の精巣組織テロメレース活性値は186.0±51.3TPGU/μgproteinであり,精子なし症例の値は66.5±31.5TPGU/proteinと有意差を認めた。精巣組織テロメレース活性値(カットオフ値30.0TPGU/μgprotein)から精子の存在を予測すると感度83.3%,特異度81.0%と良好であった。また極めて重度な精巣機能障害を呈すことで知られる非モザイク型のクラインフェルター症候群に対しても精巣組織のテロメレース活性測定を行った。24例に施行した。12例で精子が採取できた。カットオフ値を39.00TPGU/μgproteinとすると精子回収成功の感度は91.6%と良好であった。精巣組織テロメレース活性の測定は、あらゆるタイプの非閉塞性無精子症のTESE ICSIに際して精子が回収できるか否かを予想するのに極めて有用であると思われた。さらに不必要な排卵刺激を避けることができる可能性も示唆された。
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