研究概要 |
片側精巣外傷モデルにおける反対側精巣炎は、C3H/He,A/Jマウスとも、精巣細胞の反復皮下注射によって誘導される自己免疫性精巣炎に比べ、明らかに発症率が低く、炎症の程度も弱いことが組織学的観察でわかった。しかし、精巣外傷の2日前にサイクロフォスファマイドを投与すると、外傷後40日において、精巣抗原に対する遅延型反応・液性免疫とも、コントロール群に比して増強し、反対側精巣炎が激しく起こった。このことは正常下においては、精巣細胞抗原に対する自己免疫応答は抑制されているが、免疫抑制剤であるサイクロフォスファマイド前処置により、精巣抗原に対する免疫抑制が逆に外れてしまったことを示唆している。また、同じ外傷処置をしているにも関わらず、激しい精巣炎を起こすマウスと精巣炎が全く発症しないマウスとに二分され、軽度精巣炎が起こりにくい傾向にあった。その理由として疾患発症(=精巣へのリンパ球浸潤)にいたる過程では抵抗性があるものの、一度精巣へのリンパ球の浸潤と精子形成障害が発症すると、その後の精巣内の炎症を抑制する機構が働きにくい組織環境であることが考えられる。精巣細胞の反復注射による自己免疫精巣炎はC3H/He,A/Jマウスとも高率に発症したが、この精巣外傷モデルにおける疾患感受性はA/JマウスのほうがC3H/Heよりも高かった。今後は感受性の高いA/Jマウスにおいて、この外傷性精巣炎モデルの解析を進めていく予定である。
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