研究概要 |
今回IL-12アデノウイルスベクターを用いた腎癌の治療というテーマで実験を行った。基礎実験としてIL-12アデノウイルスベクターを腎癌細胞株RENCAにリポフェクション法により導入した。導入効率はマーカーgeneであるlacZの発現をX-gal染色により調べた。またIL-12遺伝子の発現の有無はELISAキットにて測定した。In vitroにてIL-12アデノウイルスベクターの導入ならびにIL-12産生が確認できたため、次に動物実験を行った。IL-12アデノウイルスベクターをあらかじめRENCA細胞に移植して放射線処理を行い増殖能を抑えた上で、BAIB/cマウスの左腰背部に移植した。次に親細胞を右腰背部に移植して、その細胞の増殖が抑制されるか検討した。しかしながら、期待していた抗腫瘍効果が得られなかったため、新しいストラテジーとして、変異型ヘルペスウィルス(G207)を用いた研究を追加して行った。G207は、増殖細胞特異的に複製増殖するように遺伝子組み換えを行ったウィルスである。このG207を用いて腎細胞癌における感受性ならびに抗腫瘍効果を検討した。(方法)ヒト腎癌細胞株ACHN,A498を用いてG207に対する感受性を解析し、さらに腎癌細胞株におけるG207の複製増殖能を検討した。またヌードマウス皮下腫瘍モデルを作製後、G207を腫瘍内投与し、抗腫瘍効果を評価した。(結果)MOI 0.1にてACHN,A498とも1週間で生存細胞は0となった。細胞内でのウィルスの複製増殖の検討では時間とともに指数的にウィルスparticleの増加を認めた。皮下腫瘍モデルへの腫瘍内投与では有意に抗腫瘍効果を示した。(結語)G207はヒト腎癌細胞株に対しin vitroならびにin vivoにおいて有意な抗腫瘍効果を示し、今後の腎細胞癌の新たな治療法と成り得る可能性が示唆された。
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