研究概要 |
Ldb1遺伝子の機能異常が婦人科悪性腫瘍の発生進展に関わる可能性について検討した。 98年から99年にかけて発表されたヒトLdb1遺伝子のcDNA配列よりPCR用プライマーを設計し、様々な子宮体癌および卵巣癌細胞株についてbeta actineをinternal controlに用いたcomparative RT-PCR法を用いてそのmRNA発現量を詳細に検討した。 子宮体癌細胞株においては、昨年の報告同様コントロールに用いた手術検体よりの正常子宮内膜におけるLdb-1遺伝子の発現量と差が認められなかった。卵巣癌細胞株においては、昨年度の研究でKuramochi,CAOV3の2株において発現量に差が認められたので、さらにSKOV2,OVCA-3,PAI,ES-2,JHOC5,SMOV-2,JHOC6の合計9株について検討した。 その結果、common epithelial由来のKuramochi,CAOV3およびOVCA-3の3株ではコントロールである手術検体の正常卵巣組織に比較し、2.4倍から2.7倍のLdb-1遺伝子の過剰発現を確認した。しかしながらmalignant teratoma由来のPAI株では正常組織とほとんど変わらない発現量を示した。興味深いことにclear cell carcinoma由来のES-2,JHOC5,SMOV-2,JHOC6の4株ではそのすべてにおいて発現量の減弱(0.2-0.6倍)を認めた。 これらの事実は卵巣癌の組織型によりLdb1遺伝子の発癌に対する寄与が異なることを示している。さらにclear cell carcinoma由来の細胞株では4株すべてにおいて発現量の減弱を示したことから、Ldb1遺伝子の発現量の減弱がこの腫瘍の臨床的表現型(抗ガン剤抵抗性、難治療性など)を特徴づけている可能性があることを示唆していると考えられた。
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