研究概要 |
[成績](1)全ての症例において,子宮筋,胎盤,臍帯標本中にhMC陽性細胞の発現が認められた.しかし,重症妊娠中毒症例では,正常妊娠例に比べ子宮筋においてはhMC陽性細胞が著明に増加しており逆に胎盤絨毛,臍帯間質部では陽性細胞が著しく減少していた.(2)子宮動脈はKCl添加により、組織湿重量1gあたり252±185g(n=48)と強い収縮反応を示したが、臍帯動脈の収縮力は48.4±35.3g(n=23)と有意に(p<0.0001)弱かった。ET-1による子宮動脈の収縮はKClの53.8%であったが、ET-1(1-31)では8.4%と有意に(p<0.005)弱かった。臍帯動脈では、ET-1およびET-1(1-31)による収縮がそれぞれKClの105%および153%と、特にET-1(1-31)に対し強い反応性を示した。 (3)ET-1(1-31)に対する子宮筋の収縮力は重症妊娠中毒症症例が,正常妊娠症例に比して有意に強かった.しかし臍帯動脈の収縮力は重症妊娠中毒症症例において有意に弱かった. [結論](1)hMCが,妊娠子宮および胎児胎盤系に存在することが確認された.重症妊娠中毒症例では,胎児胎盤系においてhMCの産生を抑制されていることは胎児に対して防御的に働いている可能性が推測された.(2)臍帯動脈の収縮反応の調節は、子宮動脈とは異っており、特にET-1(1-31)の役割が大きいと考えられる.(3)重症妊娠中毒症においては,胎児循環が収縮物質に対して何らかの防御機構が働いていることが示唆された.
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