AKT2遺伝子は、シグナル伝達物質に特徴的とされるPHドメインを有する。セリン/スレオニンプロテインキナーゼをコードしている。1995年にBellacosaらは、卵巣癌患者の12%において、この遺伝子の増幅が認められることを報告しており、遺伝子増幅症例においては、臨床予後が悪い傾向が認められるとも述べている。そこで、今回我々は、わが国の卵巣癌患者における、AKT2遺伝子増幅の頻度とその臨床予後とを検討すべく、ドットブロット法を用いた解析を試みた。当院において1992年から1995年までに初回手術を受けた計40例について、パラフィン包理切片より癌部および非癌部組織を削り出し、キシレンによる脱パラフィン後通常のフェノール、クロロホルム、イソアミルアルコールを用いてDNAを抽出した。これらの検体をドットブロット法にてナイロンメンブレンに固定し、AKT2のgenomic fragmentをプローブとしてハイブリダイゼーションを行なった。 また、internal controlとして、上皮性悪性腫瘍において遺伝子増幅の報告の無い7c22を用いた。非癌部分をコントロールとし、癌部分のAKT2遺伝子コピー数の多寡につき検討を行なったが、3コピー以上の遺伝子増幅は認められず、わが国においては、卵巣癌の発症にAKT2遺伝子の異常増幅が関与していないと考えられた。来年度は、抗AKT2抗体を用いた免疫染色法により、本遺伝子の発現の多寡につき検討を進めて行く予定である。
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