ループスアンチコアグラント(LA)の検出のための血液採取に同意を得られた妊婦30例につき、希釈APTT法(dAPTT)と希釈ラッセル蛇毒試験(dRVVT)によるLAの検査、および、抗カルジオリピンβ2-GP1抗体検査、抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体の検査を行なった。30例中3例が習慣流産の既往のある妊婦であり、4例が膠原病合併妊婦であった。 対象症例中、希釈APTT法(dAPTT)で陽性であった例は3例(10%)あり、希釈ラッセル蛇毒試験(dRVVT)で陽性であった症例は1例のみであった。双方とも陽性のものは一例もなかった。 抗カルジオリピンβ2-GP1抗体陽性者も一例のみであり、この例はLAはいずれの検査法においても陰性であった。dAPTTで陽性であった3例中、一例は問題なく分娩にいたり、一例は現在妊娠継続中、残る一例はSLE合併妊娠であり、妊娠中期にSLEの病状が悪化したため人工妊娠中絶とし、胎盤を病理学的検索に使用することとした(現在染色中)。この例のみ、LA(dAPTT)が86.4(cut off値55.5)と、極端な高値を示していた。dRVVT陽性例はdAPTTで54.5と、カットオフ値以下ではあるものの、比較的高値であった。この例も現在妊娠継続中である。 これまでの検討では、合併症を持たない妊婦ではLAや抗CL抗体が検出されることはほとんどなく、カットオフ値に問題があるのか、実際に少ないのか、検査法の問題か、結論を出すことはできない。より多数例で今後検討していきたい。また、いわゆる習慣流産の症例中でこれらの値がいかなる数値を出すのか、一般妊婦の調査以前にまずこういった対象を絞った調査が必要であると考えられた。病状が明らかに悪化した一例でも、dRVVTや抗CLβ2GP-1抗体は陰性であり、今回の検査法ではとくにdRVVT法にスクリーニング検査としての問題点があるように思われた。
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