研究概要 |
ここ数年の分子遺伝学の発展により、従来不明だった遺伝性難聴の原因遺伝子あるいは原因遺伝子が存在する染色体の位置が特定され始め、ミトコンドリア遺伝子異常による難聴、BOR症候群、Pendred症候群、コネキシン26遺伝子異常による難聴が明らかになってきた。今年度、新たにKCNQ4遺伝子、COCH遺伝子が難聴に関与する遺伝子として明らかとなった。KCNQ4遺伝子に関してはカリウムチャネルに属する蛋白であり、これについてはその局在がすでに報告されている。COCH遺伝子はその遺伝子異常による病態がメニエール病に似ており、進行性の難聴と前庭障害が生じるものである。現在ヒト内耳からcDNAライブラリーを作成中であり、このCOCH遺伝子の局在を検討するにいたっていない。難聴を引き起こす可能性があるものとして、GABA receptorの検討を開始した。GABAは抑制系の神経伝達物質として知られているが、内耳においても何らかの機能を担っていることが知られている。現在GABAの合成酵素GADのノックアウトマウスが作成され、中枢神経系に関しては新たな知見が得られているが、内耳に及ぼす影響に関しては未だ明らかにされていない。このマウスにおいてはGABA作動性神経内のGABA濃度が低下しており、音響負荷時に難聴を来す可能性が十分に考えられる。このマウスを用いて難聴を来すかどうか、また、GABAレセプターが変化するかどうか検討中である。現在のところ、正常マウスのラセン神経節細胞においてGABAα1、2,3,4,5,6レセプター、GABAβ1、2,3レセプターおよびGABAγ3が存在していることが確認された。さらに詳細な局在について検討中である。
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