研究概要 |
ヒトでの聴覚野の研究のため、ラット、サルなどの哺乳類で聴覚野への染色性を認めたカルシウム結合蛋白であるパルブアルブミン染色を用いて剖検脳右半球切片の染色を行った。平成11年度はHeschlの横回を明らかにし、これに垂直な切片を作成し、ヒト一次聴覚野にパルブアルブミンが特殊な染色性を示すこと、また二次聴覚野には一次聴覚野より弱い染色性を示すことを明らかにした。さらに平成12年度にはヒト聴覚野の詳細な地図をつくるため、連続切片での染色を行った。 連続切片を用いた研究では、ヒト一次聴覚野は 1)Heschl横回の後方起始部から始まりそのおよそ2/3程度まで、主に内側から中央に存在し、 2)とぎれることなく連続である ことを明らかにした。またヒト二次聴覚野は 1)ヒト一次聴覚野をとりまくように存在し、insula(島)、parietal operculum(弁蓋)にもはいりこんでいること、 2)いくつかの不連続な領域が存在する ことを明らかにした。さらに全半球を染めた症例からは、パルブアルブミンがfrontal inferior gyrus(40野、41野),pre-,post-central gyrus,supramarginal gyrus,occipital gyrusを染め出すことを明らかにした。したがって、他の哺乳類での結果からも考えて、一次感覚野、運動野の他に言語に関連した領域を染め出していると考えられ、これらの発達での研究の可能性を示した。以上のことからヒト聴覚野および言語関連領域の研究にパルブアルブミン免疫染色は有効であり今後の発展を示唆した。
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