研究概要 |
蛋白のアミノ基はグルコースなどの還元糖のアルデヒド基と反応し、シッフ塩基やアマドリ転位反応生成物を形成する前期反応を経て、褐色・蛍光・架橋形成を特徴とするadvanced glycation end products(AGE)を形成する。生体内蛋白におけるAGE形成は加齢とともに進行するが、糖尿病患者では高血糖に伴いその進行が加速されている。今回、我々は糖尿病網膜症の初期病態におけるAGEの役割を検討するために、インスリン非依存性糖尿病モデルと考えられているOLETFラット眼におけるAGEの局在を検討した。糖尿病発症後12ヶ月齢の高週齢のOLETFラット、およびコントロールとして同週齢のLETOラットを、全身麻酔後、眼球を摘出し、凍結切片を作成した。抗AGE抗体として、抗カルボキシメチルリジン(CML)抗体、および抗ピラリン抗体を用いて、免疫組織化学により、各組織におけるAGEの局在を検討した。結果としては、OLETFラットでは、角膜輪部上皮下と網膜内の血管周囲にCMLとピラリンが陽性に染色されたのに対して、LETOラットではすべて陰性であった。これまでの我々の検討から、AGEは網膜内において、血管新生に決定的な役割を果たす事が知られている血管内皮細胞増殖因子の発現を亢進させる事がわかっている(Lu M, Kuroki M,Amano S,et al:Advanced glycation end products increase retinal vascular endothelial growth factor expression.J Clin Invest,101:1219-1224,1998)。今回の結果より、糖尿病網膜症の初期において、網膜血管周囲におけるAGEの形成がVEGFの発現を亢進させ、網膜浮腫や網膜血管新生といった糖尿病網膜症の病態を引き起こしていく事が示唆された。
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