研究概要 |
我々はこれまでに日本有色家兎を用いて、リポポリサッラライド(LPS)とプロスタグランジンE2(PGE2)で惹起したぶどう膜炎に対して、漢方薬の有効性の研究を行ってきた。柴苓湯・黄連解毒湯・洗肝明目湯の5日間の前投与でLPSで惹起した実験的ぶどう膜炎を抑制することを明らかとした。また、黄連解毒湯・洗肝明目湯がPGE2で惹起した実験的ぶどう膜炎を抑制することを明らかとした。今回の科学研究費を用いて、まずはこの3剤が何故これら実験的眼内炎を抑制したかを明らかとするために、この3剤に共通して含有されるオウゴンが重要な役割をはたしているのではないかと考え、オウゴンを用いてPGE2とLPS惹起眼内炎の抑制効果を調べた。また、さらにオウゴンに含有される成分である、baicalein,baicalin,wogoninの抑制効果を調べた。オウゴンを家兎の飼料に配合し、このオウゴン含有飼料を眼内炎惹起の5日前から投与した。また、baicalein,baicalin,wogoninはそれぞれを60μg/kgと600μg/kgを、眼内炎惹起30分前に耳静脈より投与した。これら薬剤の投与がLPS及びPGE2惹起眼内炎をどの程度抑制したかを調べるために、一定時間毎の前房内フレア値を経時的に測定して得られた反応時間曲線下面積(AUC)をコントロール群の結果と比較し、有意検定を行った。 結果:LPS惹起眼内炎はオウゴンの前投与によって有意に抑制された。また、600μg/kgのbaicalein,baicalin,wogoninの前投与によっても有意な抑制がみられた。さらに、60μg/kgのwogoninの前投与によっても有意な抑制がみられた。しかし、オウゴン、baicalein,baicalin,wogoninの前投与では、PGE2惹起眼内炎の抑制は得られなかった。(Japanese Journal of Ophthalmology,印刷中)これらの結果より、LPS惹起眼内炎に対する、柴苓湯・黄連解毒湯・洗肝明目湯の抑制効果は、オウゴンとその含有成分が重要であることを明らかとした。
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