研究概要 |
三次元再構築角膜を用いて、in vitroにおいて増殖因子であるHGF,EGF,TGF-β1投与した場合起きる細胞内骨格の変化を調べ、角膜上皮細胞の分化機構に関する因子について検討した。 ウシ角膜を用いて三次元再構築角膜を作製し、各増殖因子を7日間投与後、ホルマリン固定、パラフィン包埋し標本を作成した。この標本とin vivoのウシ角膜を、抗サイトケラチン(CK)抗体7,8,10,14,19,5+8,10+14+15+16+19,抗ビメンチン抗体,抗デスミン抗体,抗GFAP抗体を用いて免疫染色を行い、これら中間径フィラメントの分布を比較した。in vivoと同様の分布を示すことを分化の指標とした。 CK8およびCK19は、in vivoでは基底層を除く上皮に発現するが再構築のTGF-β1群およびHGF群で同様の発現が見られた。EGF群では部分的に陽性像が見られたが表層には発現は明瞭でなかった。CK5+8はin vivoでは基底層のみに陽性となるが、再構築群では全層に陽性像が見られた。CK10+14+15+16+19は、in vivoでは陰件だが、TGF-β1群およびHGF群では基底層に陽性像が見られ、EGF群では表層にも部分的に陽性像が見られた。ビメンチンは、全群ともに角膜実質細胞にのみ陽性像が見られた。CK7,CK10,CK14,デスミン,GFAPは全群ともにすべて陰性であった。 再構築角膜では、TGF-β1群およびHGF群はin vivoと同様の中間径フィラメントの発現が見られ、これらの増殖因子は細胞内骨格の分化を促進すると考えられた。さらに、TGF-β1群はHGF群と比べて発現がin vivoに類似しており、TGF-β1は強い分化作用があると考えられた。EGFは、中間径フィラメントの分布という点では、脱分化的な作用であると考えられた。
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