研究概要 |
生後0,3日マウスにN-methyl-N-nitrosourea(MNU)60mg/kgを1回腹腔内投与するとロゼット形成を特徴とする網膜異形成が投与1〜3週でみられた。生後5,8日投与例では変化はみられず、11,14,17,21日投与例では網膜変性を生じることを確認した。いずれも視細胞アポトーシスが関与していた。 我々のラットMNU網膜変性の実験で、視細胞アポトーシスには、Baxのup-regulationとBcl-2のdown-regulationが関与していることが確認できた。今回もこれらについてメタカルン固定後パラフィン切片を作製し、免疫組織化学的検討を行ったが、各種抗原賦活法を用いても染色は見られなかった。また、凍結切片でも染色は見られなかった。そこで、Western blot法を用いて検討したが、網膜異形成群、網膜変性群ともに、以前報告したラット網膜変性と同様の結果であった。すなわち、Bcl-2は投与後12時間では減少し、その後徐々に増加を認め、投与3日にコントロールと同様のレベルに達した。Baxは投与1日をピークに増加を認め、その後徐々に減少した。 また、basic FGF(fibroblastic growth factor)やTGF(transforming growth factor)-β1については、凍結切片を用いて検討した。神経節細胞層に染色が見られたが、有意な所見は見られなかった。 以上、網膜が増殖期にある生後0,3日にMNUを投与すると網膜異形成がみられ、生後11日目以降に同様に投与した場合に見られる網膜変性とは異なった形態を示した。いずれも視細胞アポトーシスが見られたが、BaxとBcl-2が同様に関与しているものと思われた。
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