研究概要 |
平成12年度の目的として、線維芽細胞増殖因子レセプターtype III(FGFR3)遺伝子欠損マウス、ならびにGli-Krupper familyを構成する転写調節因子であるGli遺伝子の欠損モデルマウスを用いて骨・軟骨形成を検索した【平成12年研究計画1】。また、軟骨の増殖分化に関連する副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)の核小体移行に関する細胞生物学的検討を加えた【平成12年研究計画2】。その結果、FGFR3マウスでは、軟骨細胞の増殖亢進と軟骨・骨移行部における血管侵入の抑制が認められ、特に、後者は血管内皮増殖因子(VEGF)を介していることを報告した(第22回アメリカ骨代謝学会;Acta,Anat.Nipponica,Amizuka,et al.,2000;Histol.Histopath,Amizuka et al.,2000.)。さらに、Gli3遺伝子欠損マウスでは多趾症・多指症とともに、発達の悪い脛骨が観察された。組織学的に、軟骨内骨化に携わる骨原生細胞が過剰なアポトーシスを生じており、アポトーシス誘導因子として作用するBMP-2を介することが明らかとなった(第22回アメリカ骨代謝学会、第17回日本骨代謝学会、網塚ら)。さらに、PTHrPの核小体移行については、開始メチオニンをコードするAUGコドンばかりでなく下流のCUGコドンからのalternative translationが認められること、またその際に、PTHrPタンパクは核小体に移行することを明らかにした(Biochem.Biophys.Res.Commun.,Amizuka et al.,2000)。以上の研究成果は、本来計画した内容を充分満足しており、そのほとんどが論文に受理中である。また、本研究によって日本骨代謝学会学術賞、歯科基礎医学会学会賞を受賞した。
|