研究概要 |
申請者は,種々の発酵条件下(好気,微嫌気および高度嫌気条件下各種糖類の種々濃度)におけるS.mutansのpflとactの発現状況を,好気的な実験環境下で容易に検出できるようにするため,pfl,actそれぞれとレポーター遺伝子(cat:クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)との融合遺伝子をS.mutansへ導入した.また,申請者はRT-PCR法を用いm-RNA転写レベルからも,直接的にpflとactの発現をモニターする実験にも着手した.種々の発酵条件下で培養したS.mutansから全RNAを分離し,5'端に特別な塩基配列(GCリピート)をテールとして含むプライマーでRT反応を行い,続いてこのテール領域を3'端側のプライマーとしてPCR反応を行い(S.mutansから全RNAを分離するときにどの様にしても極少量の染色体DNAが混入するため,染色体DNAからの増幅を避けるための方法),増幅されたPCR産物を相対的に定量解析した. 上記の二つの方法によってpflとactの発現状況を解析した結果,本来PFLが酵素として機能しない好気的培養条件下(PFLはラジカル酵素であり,活性型は強い酸素感受性を示し好気的条件下では速やかに失活するため)でも,pflとact両遺伝子が共に,PFLが最も必須である高度嫌気的糖アルコール代謝条件下の発現量の40-50%も発現していることが確認された.従って,両者は,常に変化し易い口腔環境に備え,ほぼ構成的に発現している酵素である可能性が示唆された.さらに,actの転写機構についてPCR反応を応用して解析した結果,actはそのすぐ上流に存在する機能未知のact-5'orfと共に転写されている可能性があり,今後,act-5'orfの機能解析の必要性が示唆された.
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