研究概要 |
ヒト歯肉上皮細胞の単離,培養を行うとともに,同細胞へpapilloma virus E6/E7 geneを遺伝子導入することにより長期継代培養可能な細胞を樹立した.これら細胞は,上皮細胞の選択培地中で立方形の形態を示し敷石状に増殖した.同細胞は,増殖すると接触阻止がおこり形態変化が観察される.また,免疫染色により細胞内にkeratinを保有していた.このように樹立した細胞は,上皮細胞の形質を保持した長期継代培養可能な細胞である.歯周病原性細菌としてPorphyromonas gingivalis(Pg),Treponema denticola(Td)およびTreponema medium(Tm)を選び,これら細菌より超音波破砕画分(SE)を調製した.Pgからは線毛蛋白,リポ多糖体(LPS)を抽出,精製した.樹立した上皮細胞にPgSEを添加し培養すると,その上清中にInterleukin(IL)-8の明確な産生誘導がみられた.また,同菌LPSと培養すると,その上清中に明確なIL-8産生がみられた.一方,Escherichia coliならびにHelicobacter pylori由来LPSを添加して調べたかぎりでは,同活性はみられなかった.Pg線毛蛋白にはIL-8産生誘導活性がみられた.Td SEおよびTmSEともに同細胞からのIL-8産生誘導がみられた.同様の結果は,simian virus40 T antigen geneを導入したヒト歯肉上皮細胞でも得られた.これらの結果は,歯周病原性細菌の菌体表層成分がヒト歯肉上皮細胞を活性化することを示唆するものと考える.
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