研究概要 |
膜結合型トランスフェリン様蛋白(MTf)遺伝子の軟骨特異的なプロモータ活性に必要な領域を探求するために、マウスMTf遺伝子の転写開始点を+1として、+190bpの位置から-2662bp(MTF-2662),-1635bp(MTF-1635),-1213bp(MTF-1213),-693bp(MTF-693),-444bp(MTF-444),-210bp(MTF-210)までの5'上流領域の断片をルシュフェラーゼベクター(pGL3-Basic)に組み込んだ組換え体を作製して、SK-MEL28メラノーマ細胞、ウサギ初代軟骨細胞、および軟骨形質を誘導することが可能な細胞株ATDC5に形質導入し、プロモータ活性を測定した。その結果、SK-MEL28細胞と軟骨系細胞とで、MTF-1635とMTF-1213、MTF-693とMTF-444の間の活性に違いがあり、-1635〜-1213と-693〜-444の領域が軟骨細胞におけるMTf発現調節に関与していることが考えられた。それら2つの領域をプローブとして、軟骨細胞および非軟骨細胞の核抽出液を用いてゲルシフトアッセイを行い、軟骨特異的な発現調節領域の可能性を検討中である。 また、軟骨分化に特異的に機能する転写因子であるsox9のDNA結合配列と類似した配列が、MTf遺伝子の調節領域にも見いだされたので、上記の組換え体とsox9の発現ベクターを導入してプロモータ活性を測定した。しかし、sox9の発現はMTf遺伝子発現に影響を与えず、MTf遺伝子はsox9の標的遺伝子ではなく、別の転写因子による発現調節のメカニズムの中にあると考えられた。
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