申請者らは、p21^<waf1>の発現上昇、及び転写因子であるStat1の活性化が、HGFの腫瘍細胞抑制効果と関連のあることを見出している。そこで本研究では、株化舌癌細胞を用い、Stat1とp21^<waf1>の関連性を明らかにすることを目的とした。 まず、株化舌癌細胞を用意し、p53のhot spotであるDNA binding siteをRT-PCR法で増幅した後、その部位の塩基配列を確かめた。p53が変異を起こしている舌癌細胞にHGF刺激後、MTTassayにて増殖能を測定し、HGFによる増殖抑制が一番高い細胞を選んだ。選ばれた舌癌細胞にHGFを刺激し、時間を追って核抽出液を得、Stat1が結合するDNAコンセンサス配列をもとにoligonucleotideを合成し、[^<32>P]によってラベルされたoligonucleotideを用いゲルシフトアッセイを行った。その結果、3時間後にピークが認められた。コントロール実験としてはインターフェロン-γによるStat1の活性化を確認した。また、抗Stat1抗体を用いたsupershiftを行った結果、認められたbandがStat1とoligonucleotide複合体であることを確認した。HGF刺激し、細胞内抽出液を抗Stat1抗体で免疫沈降後、SDS-PAGEを行い抗リン酸化Stat1抗体を用いたWesternblotを行った。HGFによるStat1のリン酸化は2時間後にピークを迎えることが判明した。 以上の実験の時間的経過から、リン酸化され活性化されたStat1がP21^<waf1>のプロモーター部位のStat1結合領域に作用し、p21^<waf1>の発現が上昇することにより、舌癌細胞におけるHGFの腫瘍増殖抑制効果が起こることが判明した。
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