研究概要 |
MRSA、HIVあるいは肝炎ウイルスなどの院内感染が社会問題になっている。歯科治療時には、出血の頻度が高いことから、血液を介する感染性疾患に対しては十分な感染予防対策が必要である。特に、歯科治療で頻用される印象材には、血液や唾液の付着は避けられないことから、感染防御のため印象の消毒は重要である。また、その消毒処理によって、印象に寸法変化などの影響が生じないことが必要である。そこで、本研究では酸化電位水(pH2.6、酸化還元電位1,100mV、有効塩素濃度16ppm)を用いて、印象に対する消毒剤としての有効性について検討した。用いた印象材は付加重合型シリコーン印象材、縮重合型シリコーン印象材、寒天印象材、およびアルジネート印象材である。MO2級窩洞形成人工歯をこれらの印象材を用いて印象採得し、その印象を30分間、酸化電位水に浸漬し、その後10分間流水下で洗浄した。通法に従いメタルインレーを作成し、人工歯にセメント合着したのち、そのセメント厚さを測定して、酸化電位水の印象に与える寸法変化を検討し、次の結論を得た。 1.酸化電位水で印象の消毒を行った場合、消毒処理を行わなかった場合と比較して、付加重合型シリコーン印象材で一部にセメント層の厚みが有意に増加したが、臨床では、問題になるセメントの厚みではなかった。縮重合型シリコーン印象、および寒天アルジネート連合印象では、無処理と比較して、有意差は認めなかった。 2.従来印象の消毒に用いられている2%グルタールアルデヒドと比較して、同程度の適合性が得られた。 3.酸化電位水を印象の消毒に用いる方法は、臨床応用が可能であると考えられる。
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