研究概要 |
高齢者における顎関節症状の発現と咬合との関係を明らかにするための調査を実施した.残存歯での咬合支持を失った者について,義歯による咬合回復の有無と顎関節症状の発現との関係について分析し,さらに全部床義歯装着者について,義歯の状態(義歯に対する満足度)と顎関節症状の発現との関係についても調べることを目的とした. 調査対象は,埼玉県深谷市内の2つの介護力強化老人病院の60歳以上の入院患者とした.これらのうち,咬合支持を喪失した者(残存歯の臼歯部に咬合接触がなく,残存歯では咬頭嵌合位が保持されない者)に関して義歯の使用の有無と顎関節症状の発現頻度との関係を分析し,以下の結果を得た. 残存歯数により分類したいずれのグループで比較しても,義歯を使用していない群の方が,義歯を使用している群よりも顎関節症状の発現が高頻度であった.特に,残存歯が5から8歯のグループおよび残存歯が9歯以上のグループでは,義歯を使用していない者の40%以上に顎関節症状が認められのに対して,義歯を使用している群には顎関節症状を認める者がいなかった. 全部床義歯装着者におけろ義歯の状態(患者の満足度)と顎関節症状発現頻度との関係を調査した結果,現在使用中の義歯に対して不満を訴えている群は,義歯に満足している群よりも,顎関節症状の発現が高率であった. 以上の結果から、義歯による咬合支持回復の重要性が示唆された.また,良好な状態の義歯を装着する必要性が示された.
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