研究概要 |
近年,生理学的あるいは免疫学的手法を用いた研究から顎関節症の発症にメカニカルストレスが関与しているとの指摘がされるようになってきている.一方,顎関節の骨構造の退行性変化も同部に加わる慢性的な負荷の存在を示唆し,それが顎関節部の疼痛や関節円板の位置異常などの原因となっていることが推察されている.しかし,顎関節症患者における顎関節の形態変化については不明な点が多く,形態変化が適合性変化として生じた結果的なものか,あるいは今後さらなる変形をきたす進行性のものかなど,その予測は困難である.そこで,本研究の目的は,コンピュータグラフィックスを用い顎関節症患者の顎関節多層断層X線写真から三次元的顎関節形態を再構築し,その形態を立体的に評価したのち,下顎頭と関節窩間の顎関節隙を計測することにより関節隙狭小部を特定し,顎関節構造の経時的な変化を評価することで,顎関節部における負荷を検討することである. 昨年度はスパイラルCTのMPR画像による顎関節の撮像条件の最適化を計るための計測精度の評価を行った.今年度はスパイラルCT画像によるヒト顎関節の3次元形態の定量評価法の確立を目指し,CT撮像条件,再構成関数,CT閾値,補正方法を検討し,顎関節隙の計測を試み,その結果の一部を第12回日本顎関節学会にて発表し,学術展示優秀賞を得た.乾燥頭骸骨の下顎頭においては下顎頭長軸で3.20%の精度で再構成が可能であった.また臨床例に応用する場合,CT閾値決定法がその精度に大きく影響ぼすことが明らかになった. 本研究法は,高精度に顎関節隙を計測し,関節隙狭小部を特定し顎関節の負荷を検討することに有用であると考えられた.
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