研究概要 |
金合金、及びチタンを基板としたメタルボンドポーセレン焼付界面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、陶材と金属間の異種界面の原子構造を明らかにすることを目的とした。貴金属系メタルボンドのケースとして陶材焼付用金合金(KIK Hard II,Ishi fuku)とオペークポーセレン(VMK68,VITA)、卑金属系メタルボンドのケースとして純チタン(TypeII)とボンディングポーセレン(Super porcelain TITAN,Noritake)の焼付界面の断面TEM観察を行った。また焼成手順は使用説明書に従った。デギャッシング処理後、チタン表面にはルチル構造のTiO_2表面酸化物層が数nm厚のTiO層を挟んで整合性を持って生じていた。一方金合金ではベルビー層の再結晶と同時にSnO_2やIn_2O_3酸化物が結晶粒界に内部酸化物として非整合析出した。ポーセレン焼成後、チタン表面酸化物層は消失した。陶材側には多結晶のTiOやTi_2O_3酸化物が生じていた。またチタン側には酸素を多く固溶したチタンと非晶質チタニアからなるチタン欠乏層が生じていた。このように高温化学反応によって中間酸化物層が生じていたが、チタン欠乏層が存在するため界面チタン側が非常に弱くなっていた。一方金合金の場合、陶材は金合金と原子スケールで直接結合し、従来考えられていた中間層は認められなかった。界面に稀にみられたSnO_2やIn_2O_3酸化物は金合金とは整合性はなく機械的な結合力の向上に寄与していると考えられた。本研究によってメタルボンドポーセレン界面構造は金属が貴か卑かで大きく異なり、中間酸化物層の存在が界面の化学結合力、界面強度に大きく寄与しているという従来の考えは間違いであることを、原子レベルでのTEM観察で初めて明らかに出来た。
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